ヤクシマダカラ 「屋久島宝」 地名 

鹿児島県に属する 屋久島で 良く採種された事から この名前がついたようです。この貝に限らず 「ヤクシマ****」 と

名のつくものは 大抵ここで 良く採種されて、この名前がついたものと 思われます。

また人によっては 「ヤクジマ」 と 濁って 表記されている事もありますが 「ヤクシマ」 と 濁らずに 読むほうが正解のようです。


  ウブダカラ ・ キムスメダカラ 「 初心宝 ・ 生娘宝 」 

ピンクがかった 肌色の雰囲気から 受けるイメージで 学名 (種小名) は " musumea (娘)" と つけられています。

初々しさを感じる ピンク色を " 世間ズレしていない ウブな娘 " と イメージし 「ウブダカラ」 という 和名がついたようです。

近似種の キムスメダカラ も 似たようなニュアンス " 生娘 = 処女 " という意味を込め キムスメダカラ と 付けられたようです。

それにしても、俗っぽいことを言えば 処女じゃなかったら 何になるのだろう・・ 浮女とか? (苦笑)

※ 浮女( " うかれめ " 尻軽の 同義語。 男性に対して 性的に 遊び慣れている 女性の事を 指します。)


  オトメダカラ 「乙女宝」 

深海性で 稀少なこともあり、色彩形状も 実に端麗なことから コレクターにとっては 高嶺の花的な タカラガイです。

が、正直言えば 「この貝のイメージの どのあたりが 乙女なのか?」 と思っているのは管理人だけではないと思われます。

キムスメ ・ ウブダカラの時は 殻色から 初々しさを感じて・・ という内容でしたので、つい そういう視点で 考えてしまいますが

オトメダカラは 名前の割には 殻色も 渋めで、オトメという言葉から受ける 雰囲気もなく、その由来は 気になっていました。

で、由来を 調べると オトメダカラと命名したのは 平瀬 興一郎 氏。日本貝類学会 創立発起人の 一人であり、また

「天然色写真 日本貝類図譜」 の 著者でもある。 貝類学においては 有名で 多くの貝の和名に、その名がついています。

この 平瀬氏の元に 紀伊田辺 (付近に住んでいた?) の 少女が 貝を持ち寄った事から、その少女を " 乙女 " と 表現

乙女から もらった宝貝 ということで 「乙女宝」 と 命名されたのだそう。 ロマンチックな 命名の由来に 驚きました。

持ち寄ったのが 20代後半の女性だったら、年配の女性だったら、どうなっていたんだろうと 想像すると また楽しいです(笑)


  カノコダカラ 「鹿の子宝」 

褐色の 背模様の中に 小鹿の背に見られる風の 斑点がある 小ぶりなタカラガイです。カノコを 漢字で書くと 「鹿の子」 となり

鹿の子供の背にある 鹿の子斑 (かのこまだら) を 略して、この名前になったようです。鹿と名のつく タカラガイの中には

「シカタカラ」 というものも ありますが、これは 成長した鹿の斑を 連想させてつけているのでしょうか。


  マルチンダカラ  人名 

クリーム色の タカラガイ。この貝の 名前の由来は 「K . Martin」 という オランダの考古学者さんの 名前がついています。

そのまま人名からつけられているので、専門家ページに入れるか 悩みましたが 人物詳細が 不明の為、こちらに掲載です。

考古学者さんというだけあって、K . Martin 氏は、この貝が とても 好きだったんでしょうね。


  ヤナギシボリダカラ 「柳絞宝」 

淡橙褐色の殻に 黒い縦縞模様が 不規則 ・ 断続的に、何本も 現れているのが 印象的な タカラガイです。

「柳絞り」 とは 絞り染めの手法の ひとつで 枝垂れ柳を 思わせる、細い 線模様の出ている 染めのことを 指します。

そこから、この貝に現れている 黒い縦縞線を、この柳絞りに喩えて、この名前がついたようです。他、巻貝でも このような

縦縞線の出たものもあり 成長脈に平行な縦の 細線模様が 多数出ている種には 「柳絞り」 と 名付けられているようです。

(Ex: ヤナギシボリイモ ・ ヤナギシボリニンギョウボラなど・・)


  ホンサバダカラ 「本鯖宝」

サバタカラは 「ニセサバタカラ」 「ミナミサバタカラ」 など 類似する種が多く、その区別にも 大変悩まされる タカラガイです。

類似種の ニセサバタカラは 「サバタカラに 似ているものの 非なるもの」 だったことから つけられた 名前になりますが

この 本鯖宝は 「本物の鯖宝貝」 という事ではなく、殻背面の ムラ模様が 「本鯖 (サバの種類でいうところの マサバ)」

を連想させるところから ついたようです。まとめると 「本鯖模様の宝貝」 という意味になるようです。大変、複雑な感じです。

では、サバタカラは 何鯖に 似ているから サバタカラなの? と 疑問が沸きますが、残念ながら 文献には載っていないのです。


  サクライダカラ 「櫻井宝」

タカラガイの中でも 日本3名宝貝 (テラマチ ・ オトメ ・ ニッポン)に 並ぶ、優美なタカラガイです。 サクライの 由来は

東京都 神田で 「ぼたん」 という 鳥料理店の オーナーと 鉱物学の研究を兼務し、理学博士号を会得した 櫻井 欽一 氏の

苗字を取ったものです。氏は 小学5年生から 鉱物に興味を持ち、独学で 収集 ・ 研究を続けますが、その収集内容は

貝殻にも 及んだようで、集めた鉱物 ・ 貝の標本は 個人博物館を 設けて 研究者の為に 公開されていました。

1993年に急逝された後、遺品コレクションが 国立科学博物館、神奈川県立 生命の星 ・ 地球博物館に寄贈されました。

その名を 「 櫻井コレクション 」 とし、博物館にて 大切に 保存されています。

また、サクライとつく和名の貝は いずれも 櫻井 欽一 氏によって、献名されたものです。(詳しくは Specialist ページにて )


  アジロダカラ 「網代宝」  

網代(アジロ)とは " 網しろ " (網の代わり)の略で 割った竹などで編んで作る 定置漁具のことです。

漁場に 打ち込んだ 杭の間に設置し、垣のようにして使用。材質は 薄く削った 竹 ・ 葦 ・ 桧 などで

それらを 縦 ・ 横 ・ 斜めに 交差させながら 編むのが 特徴です。 ひらがなの 「く」 を 連ねたような

模様を 斜めに交差する 網代の 網目に見立て、この名前がつけられました。学名は 「ジグザグ模様」 

と、名づけられていることもあり 右の 網代文を見ると 非常に頷けます。 網代文様は 着物の模様などでも 多用されており

右図の文様とは 少し違った模様で 出てくることも 多々あります。 海洋の神秘たるや、ここにもありです。

  ナツメモドキ 「棗擬き」  

かなり 混乱している和名と 言えるようで " ナツメガイモドキ " " ナツメモドキダカラガイ " " ナツメダカラガイモドキ " と

一体、どれが 本物ですか? と なります。 ***ガイ という 名前の付け方が 定着しているためか 色々な名前がありますが

正式には ナツメモドキ となるようです。 黄褐色の 細かな斑点のある タカラガイで、ナツメダカラと 近縁にあたるため

" ナツメダカラ擬き " という 雰囲気だったんでしょうか。


しかしながら、この貝に " ナツメモドキ " と 名がついた時点では、ナツメダカラ という和名は 存在していなかったようです。

ナツメガイの 殻表の斑点と 類似した部分を取り " ナツメガイ擬きの タカラガイ " が 転じ、ナツメモドキ となったのでしょうか。

勘違いからの 造名も 多そうな タカラガイですね。