サザエ 「栄螺」 

アワビと並び 代表格的な 食用可能の巻貝。独特の風味を持ち、磯料理屋などでは 刺身や つぼ焼きなどで 提供される。

地方により サザイ、サダエなど 古い呼び方も あるようだが、一般的に サザエ と呼ばれています。 語源自体は ハッキリと

していないものの 「サザ」 は " さざなみ " " ささやか " などの 「さざ ・ ささ」 と 同一の意味を持つ。また 「さざ ・ ささ」 は

小さい という表現で 使用される言葉、「エ」 は 家を指す言葉と いうことから サザエとは 小さな家 と いう意味のようです。


  ヤコウガイ 「夜光貝」 

赤ん坊の頭くらいの 巨大なものもあるといわれる、角名し サザエに ソックリな形をしている 夜光貝。

真珠層が厚く 螺鈿細工などに よく使われ、美しい工芸品になることも 多々。「夜光」 という 名前がついているものの

貝そのものを 置いておき 暗所で見ると 発光するというわけではないようです。 屋久島で よく採種されたことから

「屋久貝(やくがい)」 と 呼ばれたのが 訛って 夜光貝に 転じたのが その由来のようです。

" やくがい " → " やくぉがい " → " やこうがい "  といったところでしょうか。

良く お土産屋などで "夜光貝を削った 粉入りの砂 " が 売られていて 暗所に置くと 光りますが、どうやら嘘らしいです。


  ショッコウラ 「蜀江螺」 

体層が 大きく、規則正しい 板状の縦肋がある 肉食性の巻貝。 艶の豊富な 褐色の殻に 濃茶色の 縦縞模様が美しく

人気があります。ショッコウは 漢字だと " 蜀江 " と 書きます。 現在の 中国 四川省付近を 当時は 「蜀」 と 呼んでおり

成都 付近を 流れる川の名前を 「 蜀江 」 と 呼んでいたようです。 この蜀江(川) の水に 晒した糸で 織った錦織物を

「蜀江の錦」 と呼び、日本織物の 有名どころ 「京都 ・ 西陣」 が、蜀江型の紋様を 織り出した錦なども 「蜀江の錦」 と

呼ばれ、扱われた経緯があります。この貝の 模様の美しさを 蜀江の錦 に 喩えたのが、この名前の 由来のようですね。

また 和名掲載文献に 「ショッコウラ」 または 「ショクコウラ」 と載っていたりしますが、どちらも 間違いではないようです。


  マサメダマ 「柾目玉」 

球型の巻貝で 艶があり、褐色の 細い縦縞があるのが 特徴。 類似種で 「モクメダマ」 もあり、名前の由来が 似ています。

木目(モクメ) とは、木材の断面に見られる 年輪が作り出す 文様のことであり、板材などの文様が 山型や 不規則に

曲がっているものを 「モクメ」 と 呼び、まっすぐに 平行して並んでいるものを 「柾目(マサメ)」 と 呼ぶようです。

不規則な 木目模様の モクメダマに 対し、整然とした 柾目模様がついていることから 「マサメダマ」 と 名づけられたようです。


  オキナエビス 「翁戎」

古生代 ・ 中生代に栄えた 「生きている化石」 として 名高い オキナエビス。1843年の 「目八譜」 には

" 形 桃実に似たるを 似て 西王母という、或いは 戎介の 老長たるを 似て 翁の名にあり "

と 記されており 年功を積んだ翁に見たて、この名前が 定着したようです。要約すれば 長年実績を積んできた翁と 長い間

絶滅する事なく、今に至るところを 掛けたのかと想像されます。目八譜の内容は難しい・・。


別名もあります。明治元年、神奈川県三崎で、青木 熊吉氏が オキナエビスを 釣り上げました。恐らく 寄贈したのでしょう。

その労に対して 東京大学 ・ 蓑作博士より 40円の 謝礼を 受けました。 40円? と 侮ることなかれ。 当時の 40円は

超大金、現代の お金の価値と異なります。( 現代の 1円 = 当時の 2万円 ) 80万円もの 謝礼金とは 驚きですが

その時、青木氏が 長者になったようだ と 喜んだことから 「長者貝」 とも 呼ばれています。


  カセンガイ 「花仙貝 ・ 華蘚貝」 

乳白色 ・ 半透明の殻質、細かい細工がなされたような 繊細な美しい姿は まるで 花の彫刻のようです。

この種の貝は、タカラガイ 同様に コレクターに 人気があります。カセンガイは 「華蘚」 の 文字が 当てられていますが

熟語的には 「華蘚」 という文字は 実在していないそうで、実際に 辞書で 検索したり 調べましたが 確かに出てきません。

インターネット上でも、カセンガイの 紹介ページなどでは 華蘚という文字が出ますが、辞書の検索結果などは ありません。

そこで イメージとして 「花の中の仙人」 又は 「仙人のように 気高い花」 という意味を持つ 花中神仙 を あてて 略し

花仙 という文字が あてられているのだそうです。その字の 雰囲気から、この貝の 優美さを表現しているのだそうです。


  イトグルマ 「糸車」 

殻高 7cm位で、細く長い 水管溝を持ち 螺層部分が 全体の 1 / 3 程度になる 繊細な貝です。

「糸車」 という名前は 「糸繰り車」 の 略語です。 糸繰り車とは 昔、繭や 綿花から 糸を取り出し、選合わせる際に

使用された 手回しの 紡ぎ車のこと。 実際の 糸繰り車は 車輪状のようですが、この貝自体は 車輪状ではありません。

目八譜では 種名が 「紡車介」 と なっていて、その中の解説に 「 形糸ヲ 紡績スル 紡車ニ 似タリ 」 とあるのだそうです。

本来は 「ツムガイ ・ 紡車貝」 だったものを カタカナに 直す際 「紡 → 糸」 と 連想し 糸車の名前が 出来たのではないかと

推測されています。 現代でいえば 「リリアン」 の 形状に 少し 似ているように 思います。


  ルリガイ 「瑠璃貝」 

ころん。とした フォルムで、薄紫色の巻貝です。 下に 下がるにつれて 濃紫色になる グラデーションが 大変 美しい貝。

クチムラサキサンゴヤドリの 親戚のような雰囲気ですが、殻は かなり薄く 海底を這わずに 自らの分泌液で 泡の筏を作って

それに吊り下がり、浮遊生活をする種の貝です。 瑠璃貝の 「瑠璃」 とは 梵語の ベイルリ が 起源となっており

古代インド ・ 中国で 珍品とされた宝石、ラピスラズリ の事を 指します。 (lapiz = 石 lazuli = 青 日本名は 金青石 )

ラピスラズリ といえば、アクセサリーなどで 良く使用されていますが、色は 濃紺であり本来、瑠璃色というのは

濃い群青色や 紫ががった青 のことを指します。 ルリガイの 色自体は 厳密にいえば 瑠璃色とは 程遠い、紫色ですが

同系統の 色味であるということから、瑠璃貝と 命名されたようです。この辺りが 和名のアバウトなところですね。


  スガイ 「酢貝」 

「酢」 という文字が入り、見るからに 酸っぱそうな名前です。貝の特質を 調べてみると 内湾の 潮間帯に 分布する巻貝で

味に 酢味があるわけではないようです。 形は 角なしサザエのようで 殻が厚め。 蓋も石灰質で 厚く半球状になっています。

和名と 繋がりが深そうな エピソードを探すと、この蓋に ヒントがあるようです。 蓋表の球面を下にして 酢 (酸) に浸すと

気泡を出して 溶けながら 回転するため、昔の子供達が そのようにして遊んでおり、酢貝と 名づけられたそうです。

しかしながら、蓋が 酢で 回転するから 酢貝では、蓋の和名となり、ちょっと おかしな話に なってしまいます。調べてみると

殻のほうは、また 別の呼び名があり、唐雲貝(カラクモガイ) と 呼ばれているようです。蓋と殻と 和名が違うとは、驚きです。

実に、アバウト(苦笑) ということで、酢貝 とは、唐雲貝の 蓋を指す 和名であることが 解りました。

では カラクモガイの由来は?と、いきたいところですが残念ながら文献には記載がなく。別の書籍で 後日 改めたいです。


  カイコガイ 「蚕貝」 

殻の高さが 2cm程度の 白色 ・ 楕円の 内巻きの貝。 純白で 艶があり、コロコロとしていて 可愛らしい貝です。

蚕の語の由来は 「飼い子」 とされ、生糸を 採取する為に飼う、蚕蛾の 白い幼虫を 指す言葉として、あまりにも有名です。

が、カイコガイの カイコ は、この蚕蛾の 幼虫(芋虫) のことを 指したわけではなく、幼虫が作る 繭玉 (繭) に 擬えて

名付けられたものです。確かに 白く楕円で、蚕の繭玉のように 見えます。 シンプルな形も、そのイメージに ぴったりです。