ビノスガイ 「美之主貝」

マルスダレガイ科に 属する 二枚貝。ビノスと 聞くと、貝料理が好きな方なら 思い出す貝があると 思いますが、ビノスガイの

近似種としてある ホンビノスガイ とは 別種になります。 ビノスガイ ・ ホンビノスガイ共に 食べられる貝ではありますが

味については、いずれも やや劣る傾向にあります。 ご存じない方であれば 鮮魚店の貝コーナーで 見る事が 出来るでしょう。

ホンビノスガイについては 「 白ハマグリ 」 という名前で 販売されていることも あると思います。

語源は Venus からきており 以前は Venus属に 属していたたため、ここから取られたようです。ご存知の通り Venus とは

愛と美の女神を指します。 他にもキューピッドの母の 名であったり、天体なら 金星のことを Venus とも 呼びますが とかく

二枚貝の属名として 多く使用されている傾向があります。 和名は 加藤 延年 氏 により 「美之主貝」 と命名されました。

加藤氏は ヴィーナスの響きと意味をとり、命名したようですが 実際の貝は、実にありふれた 殻の厚い地味な 二枚貝です。

名前負けしている事、この上ないが 外来語の当て字としては "倶楽部" 等に並ぶ、昭和の香り漂う 傑作和名といえます。

余談ですが、ホンビノスガイについては 「本美之主」 となり、本当の美はこちらか? と 聞きたくるような 字面であります。


  ツキヒガイ 「月日貝」

イタヤガイ科に属する、赤褐色の殻が 鮮やかで厚めの貝。放射肋の 凹凸が 少ない スッペリとした 真ん丸な形です。

開かれる前の姿は、赤い 二枚貝の中から 黄色が見え 鮮やかで美しい色合いです。 月日貝の 名前の由来は 表側の赤色を

太陽、裏側の黄色(主に淵)を 月と見立てたことから、この名になりました。房総半島以南に分布、水深 20m以深の 綺麗な

砂地で浅く潜り 触手を広げています。無数にある 眼点と呼ばれる器官で光を 感じ取るため、薄く砂を被っているというのが

正解かもしれません。画像の左側は 眼点が出ている図になります。一般的に言われる 二枚貝の " 紐 " の部分のことです。



また食用の貝であり、イタヤガイ族では 1 ・ 2 を争う、味の良さで 貝焼きなど 食卓に上ることも多いです。個人的な感想として

ホタテより力強く 貝柱は 甘味が強い印象です。最旬は 秋。画像右側は 鮮魚店で売っていた ツキヒガイですが、房総以南に

分布ながら 関東では 珍しい存在。同じく美味と言われる ヒオウギガイに並び、近場の鮮魚店では 中々 お目にかかれません。

見つけたら 是非 お試しいただきたい 逸品です。


  ミルクイ 「海松喰」

長さ 15cm弱の 食用の二枚貝。店頭での 発売名は 「みる貝」 とされることが多く、寿司ネタなどで 人気がある種です。

バカガイ科に属し 浅瀬に生息。その環境から 海藻が多い事もあり、殻の水管付近に 海松(みる)という 海藻が 多く生えた

地点で 発見されましたが、その姿は まるで 貝が 海松を 食べているように見えたそうです。 そこから転じて 「海松喰い」 と

いう名前になったようです。ただし 実際には 海松を食べるわけではなく、海松のある所にしか 生息しないわけでもないので

海松を 付けた姿を見る事は、非常に困難を極めます。発見当時、 たまたま ミルクイ の 水管付近についた フサコケムシや

微小海藻 を総じて、海松と 呼んでいたのではないかと 想像されます。 海松は 緑藻の一種で 岩礁上や 小石類の上に

生育します。 高さ 40cmほどで 扇状に広がり、表面はビロード状で 色は 深緑色の特徴を持ちます。

 また近似種に 白みる貝 という種もあり、同じく食用で 販売されてますが 別種になり、こちらは キヌマトイガイ科 に属し

正式名称は 「ナミガイ」 といいます。 殻は白く 長方系で、みる貝より水管が 長いのが特徴です。


  マスオガイ 「真蘇芳貝」  

シオサザナミ科に属する、立派な放射肋が 特徴の二枚貝です。色は 紫から 淡紅の グラデーションで

海中生息時は 褐色の皮を被っています。 概ねの特徴として、紫の色味が 強く 出ていることが 多い。

この貝の名に用いられている 「マスオ」 とは 真赭 ・ 真朱 と書かれ " ますほ " " まそほ " " まそお "

とも 読む。真赭とは 色の名前で、現在の 蘇芳(スオウ)色を 指します。また 昔、顔料として使用した

赤鉄鋼を含む 赤土を指して 真赭と言う事もあります。ちなみに、蘇芳は マメ科 ジャケツイバラの小高木で、インド や

マレー諸島が 原産国、芯材を布などの染物に使用します。染める際に用いる 材料により 赤紫色や 青紫など、同じ紫でも

色温度の違う 色合いに変えることが可能のため 上図の色については、参照程度に 留めていただけたら 幸いです。